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神戸地方裁判所 平成9年(ワ)1598号 判決 1999年5月10日

原告

太矢すずゑ

被告

齊藤正美

ほか一名

主文

一  被告らは各自、原告に対し、金一〇四一万四九八七円とうち金八八四万九〇五九円に対する平成七年六月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを三分し、その二を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一原告の請求

被告らは各自、原告に対し、金三〇二一万五四三五円及びこれに対する平成七年六月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

原告は、後記の交通事故(以下「本件事故」という。)により負傷して損害を被ったとして、その賠償を求める。

一  事故の発生(当事者間に争いがない。)

発生日時 平成七年六月一二日午前八時五五分頃

発生場所 兵庫県氷上郡市島町矢代三七七番地の一先路上

被告車 普通貨物自動車(被告齊藤運転)

原告車 原動機付自転車(原告運転)

争いのない範囲の事故態様

被告車が道路右側部分に出て原告車の追い越しを始めたたが、対向車を認めてハンドルを左に切って左側車線に戻ったところ、原告車の右バックミラー部に被告車左後角部が接触し、原告車が転倒した。

二  原告の負傷(当事者間に争いがない。)

1  原告(大正一五年八月一日生。当時六八歳)は本件事故により、左撓骨茎状突起骨折、豆条骨骨折、右距骨剥離骨折、頭部外傷Ⅱ型、左水晶体亜脱臼、左外傷性白内障、下左第三歯歯牙破損、下右第一歯歯牙破折、下左第四歯歯牙破折の傷害を負った。(このほか、歯髄炎、歯根膜炎の傷害を負ったかについては争いがある。)

2  原告は右受傷のため、次のとおり治療を受けた。

<1> 平成七年六月一二日から同年七月二二日まで兵庫県立柏原病院に入院(四一日)

<2> 七月二三日から同九年一月一三日まで同病院に通院(実二一日)

<3> 平成七年一一月一〇日から同八年一月一七日まで吉竹歯科医院に通院(実一四日)

<4> 平成七年一二月二五日桐村鹿児島眼科医院に通院(実一日)

3  原告の後遺障害

原告は平成九年一月一三日に症状固定したとの診断を受けた。

右診断に基づき、平成九年五月に、自動車保険料率算定会の事前認定で、左眼視力障害(〇・〇二)と正面視複視を内容とする八級相当の後遺障害と、左前額部の顔面醜状を内容とする一二級一四号の後遺障害による併合七級との認定がなされた。(右認定の相当性については争いがある。)

三  被告らの責任原因(争いがない。)

被告齊藤には民法七〇九条による損害賠償責任がある。被告会社には被告車の保有者として自動車損害賠償保障法三条により、かつ、使用人たる被告齊藤が被告会社の業務執行中に起こした事故として民法七一五条により、損害賠償責任がある。

四  争点

1  事故態様と過失相殺の当否・程度

(一) 被告らの主張

被告車が原告車を追い越したあと進路を変更して原告車の走行車線に戻って来ることは予測しえたから、原告にも被告車の進路変更を察知して適宜減速等の措置を講ずることにより衝突を回避することは可能であったのであり、一〇パーセント程度の過失相殺をすべきである。

(二) 原告の主張

事故現場は、前方の見通しが悪く、しかも追い越し禁止場所であるにもかかわらず、被告齊藤は右側車線に出て追い越しを始め、原告車の前方に戻る際に原告車に自車を接触させたものであって、原告には過失はない。

2  原告の損害

(一) 原告の主張

原告の損害は別紙「損害計算表」中の請求額欄記載のとおりである。

(1) 治療費 実費。

(2) 付添看護費

一日当り六〇〇〇円で、入院・通院実日数七七日分を求める。

原告には、左眼視力障害と正面視複視のため、茶色が紫色に見える、すべての色が実際より明るい色に見える、左右片目ずつ見ると左は右より大きく見える、両目で見ると二重に見えて二色に見える、などの後遺障害が残っている。このため一センチメートルほどの段差でもよく注意しないと躓いて転んでしまうので、足先で確かめながら歩かなければならない。通院中はより重い状態であったのであり、付添いを要した。

(3) 入院雑費 一日一三〇〇円の割合。

(4) 休業損害

原告は、本件事故当時六八歳の主婦であったが、料理店「太矢滝」で刺し身の切り盛りなどの調理の仕事にも従事していた。従って、兼業主婦であるから、休業損害額は賃金センサスによる六五歳以上の女子の平均年収二九八万八七〇〇円を基礎収入とすべきである。申告所得額は、主婦としての稼働を無視したものであるから、これにのみ基づくのは正当ではない。

休業期間は症状の固定した平成九年一月一三日まで五八二日に達した。

(5) 入通院慰謝料

入院四一日のほか、通院一二六日(通院実日数の三・五倍=週二回程度として)の治療を要する、多数箇所の傷害を受けた。

(6) 後遺障害逸失利益

前記の基礎収入により、併合七級で労働能力喪失率五六パーセント、症状固定時七〇歳で、平均稼働年数七年として、新ホフマン係数五・一三四による。

原告は前記のような後遺障害のため包丁も持てなくなり、店に出ることはもちろん主婦としての仕事もできなくなった。

(7) 後遺障害慰謝料

左右の眼に遠近感や色彩の違いがあるため、毎日の生活にも神経を使い、疲れる生活を送ることをよぎなくされている。顔面醜状痕が労働能力に影響ないとしても、後遺障害慰謝料として考慮されるべきである。

(8) 物損 原告車は全損となったので、事故当時の時価。

(9) 自宅改造費

原告宅は一階が駐車場で二階が居住部分となっている。原告が眼の障害により段差の認識が困難となり、階段の昇り降りができなくなったため、階段にリフトを取り付けた。その設置費用。

(10) 眼鏡代 眼鏡の購入費

(11) タクシー代 通院交通費

(12) コンタクトレンズ代

年間購入費用は三万円であり、平均余命一七年間の購入費用を新ホフマン係数で中間利息を控除する。

(13) 損害填補

原告は被告らから、二三六万一四九〇円の損害填補を受けたほか、自賠責保険金として平成一〇年六月一二日に一〇四三万円を受領した。

(14) 弁護士費用 二七〇万円が相当である。

(15) 遅延損害金

事故日から右(13)の保険金受領日までの間の、右受領額に対する年五分の割合による遅延損害金。

(16) 以上によると、原告が請求できる金額は二一三五万二七九二円となる。

(訴求額より少ないのは、訴訟係属後の自賠責保険金の受領に伴う請求減縮がなされなかったことによる。)

(二) 被告ら

(1) 治療費 認める。

(2) 付添看護費 一日四〇〇〇円の割合で三〇日分の一二万円の限度で認める。

(3) 入院雑費 一日一〇〇〇円の割合で四一日分の限度で認める。

(4) 休業損害

原告が本件事故時六八歳であったことは認めるが、家事以外の労働に従事していたことは不知。原告は高齢のうえ、平成七年度の申告所得額は年間一五〇万円に止まる。仮に休業損害が認められるとしても、賃金センサスではなく、この金額を基準に計算されるべきである。要休業期間が症状固定日までの五八二日間であったことは否認する。二か月程度に過ぎない。

(5) 入通院慰謝料は一〇〇万円の限度で認める。

入通院期間を基準に算定することは妥当であるが、通院は長期であるものの、通院頻度は低く一か月に二、三度にも達しないから、修正して算定すべきである。

(6) 後遺障害逸失利益

顔面醜状痕は、原告の年齢からして後遺障害による逸失利益の算定要素には当たらない。左眼視力は矯正視力一・〇と回復している。従って後遺障害は正面視複視だけであり、後遺障害等級表一二級(「一眼の眼球に著しい調整機能障害または運動障害を残すもの」)に止まる。

基礎収入は前記の申告所得によるべきである。なお高齢女性の場合の家事労働は身の回りのことに止まるのであって、賃金センサスをそのまま適用するのは相当ではない。

(7) 後遺障害慰謝料

右の後遺障害の程度からして、一〇〇〇万円は高額に過ぎる。四〇〇万円の限度で認める。

(8) 原告車の物損 認める。

(9) 自宅改造費

原告の診療録には、階段の昇り降りに注意を促すような記載が一切ない。リフト設置費用は本件事故とは相当因果関係がない。

(10) 眼鏡代 認める。

(11) タクシー代 認める。

(12) コンタクトレンズ代 三二万七二七〇円の限度で認める。年間三万円でも、七〇歳から平均余命八四歳までの新ホフマン係数一〇・九〇九により、三二万七二七〇円に止まる。

(13) 損害填補額 認める。

(14) 弁護士費用 不知。

第三判断

一  過失相殺の当否・割合について

1  前記争いがない事実のほか、証拠(甲三、四、五、七)によると、次のとおり認められる。

被告齊藤は、被告車(長さ八・一四メートル)を運転し速度六〇キロメートルで原告車を右側から追い抜いたあと、対向車があったために左車線に戻る際に、原告車のバックミラーに自車の左後部付近を接触させて、原告車を転倒させた。

原被告車の進行していた南行き車線は幅員二・八メートルで、道路左端(隣接する工場を囲むフェンス)から車線の外側線までは一・四五メートルの幅がある。接触地点は外側線の内側〇・八五メートル付近であった。現場はゆるやかな右カーブであるが、見通しは悪くない。

2  右によると、原告は外側線よりやや内側という程度のところを走行していたもので、ことさら道路中央寄りを走行していたとは認められない。たしかに原告が、被告車に追い抜かれたときに、外側線ぎりぎりまで避けていれば、接触を免れることはできたとは考えられるが、右カーブでの遠回りを求めることになるし、原告車が外側線沿いに走っていても、自車線に戻ってくる被告車の後端がごく接近してしまう関係にあったと解されるから、本件事故は、被告齊藤に、原告車との相互関係に対する注意が足りなかったことが専らの原因というべきであるから、原告には、過失相殺を行うべき落ち度はないと解するのが相当である。

二  原告の損害について

1  原告(事故当時六八歳)が左撓骨茎状突起骨折、豆条骨骨折、右距骨剥離骨折、頭部外傷Ⅱ型、左水晶体亜脱臼、左外傷性白内障、左第三歯歯牙破損、右第一歯歯牙破折、左第四歯歯牙破折の傷害を負ったことは当事者間に争いがない。甲一〇によると、左第三歯歯牙破損に伴い歯髄炎が、左第四歯歯牙破折に伴い歯根膜炎が生じたことが認められる。

2  そして右治療のため、原告が、次のとおり入通院して治療を受けたことは当事者間に争いがない。

(一) 平成七年六月一二日から同年七月二二日まで兵庫県立柏原病院に入院(四一日)

(二) 同年七月二三日から同九年一月一三日まで同病院に通院(実二一日)

(三) 平成七年一一月一〇日から同八年一月一七日まで吉竹歯科医院に通院(実一四日)

(四) 平成七年一二月二五日桐村鹿児島眼科医院に通院(実一日)

3  原告が平成九年一月一三日に症状固定したとの診断を受け、右診断に基づき、同年五月に、自賠責保険の事前認定により、左眼視力障害(〇・〇二)と正面視複視を内容とする八級相当の後遺障害と、左前額部の顔面醜状を内容とする一二級一四号の後遺障害とがあり、併合七級と認定されたことは当事者間に争いがない。

4  個別の損害費目について

(一) 治療費 二四三万三九三〇円

当事者間に争いがない。

(二) 付添看護費 一五万円

(1) まず、原告の治療及び入通院状況を見る。

原告は外傷のため、県立柏原病院脳外科で、頭部外傷に対する手当等を受けたほか、左撓骨及び右距骨の各骨折部をギプス固定されて入院した。そして眼痛や左眼が見えないなどを訴え、左水晶体亜脱臼等と診断されて、事故一〇日後の平成七年六月二六日に同病院眼科で左眼の硝子体と水晶体を切除して人工水晶体を挿入する手術を受けた。術後の経過は良好であった。七月三日には退院を促されたが、各骨折部のギプス固定が続いており、このまま帰宅しても生活できないとの原告の訴えが容れられて、眼科は退院扱いとなり、整形外科に転科して入院が延長された。同月一二日にはギプスが除去されて、リハビリテーションが開始された。そして同月二二日、左腕の痛みなどを残したまま退院となった。転科後は退院までに、眼科は二度受診しただけであった。退院時には、左眼について、見えるときと見えないときがあると訴えていた。(乙一一、一二、一三)

退院後、整形外科は同年八月四日に一度受診したが、その後は症状固定診断を受けるために平成九年一月一三日に受診しただけであった。また眼科については、退院後、七月ないし九月には月に一度ずつ受診し、コンタクトレンズを作って貰って装用し、矯正視力は一・〇まで回復していた。一一月と一二月には、左眼は色が見えにくい、とか、膜を張ったような感じがあるなどと訴えて、月に二度受診したが、経過は良好であり、その後も月に一度程度の通院を続け、コンタクトレンズの焦点が合いにくいなどの訴えで何度か交換してもらった。平成八年二月に、片眼ずつだとよく見えるが、両眼だと焦点が合いにくい、との訴えが確認されたが、無水晶体となったため、片眼ずつの視力回復はできたが、両眼視機能の回復は難しく、慣れるしかない、と指導された。同年九月一三日、近見時の複視という症状を残して固定しているとする後遺障害診断書が発行された。同日までの眼科への通院日数は計二〇日であった。このほか本件事故による歯の折損等のため、平成七年一一月一〇日から翌平成八年一月一七日までの間に、原告と同町内の歯科医院である吉竹歯科医院に一四日通院した。

(甲八ないし一一、乙一二)

(2) 右の事実からすると、原告が家人等の付添い看護を要したのは、入院期間のうち事故日から一か月程度であったと見るのが相当である。また、退院後の診療録等にも、独歩の困難や転倒の恐れを訴えたり、注意されたりした記載は一切なく、通院について家人の付添いを要するような症状であったとは認められない。

(3) そうすると、入院期間中の三〇日についてのみ、家人の付添い看護費として、一日当たり五〇〇〇円の割合で認容するのが相当である。

(三) 入院雑費 五万三三〇〇円

入院期間四一日について、一日一三〇〇円の割合で認容するのが相当である。

(四) 休業損害 二四一万七五六六円

(1) 原告は、本件事故当時六八歳の主婦である。夫と同居するが、同じ敷地内の別棟に長男夫婦らが居住している。家族で料理店「太矢滝」を営んでおり(営業主は長男)、原告は調理師の免許を有していて、主として魚を調理する仕事にも従事して、右料理店から年間一五〇万円の給与を得ていた。本件事故後、原告は、複視のため物の遠近感が欠けることや、左右の眼で色が異なることなどで、包丁をもった料理ができなくなったほか、足元の凹凸の有無も見にくく、足の運びがやや不自由となったこともあって、家事の処理も多少不自由になった。

(甲一二、一五、乙九)

(2) 右からすると、右の給与額は、主婦としての稼働を考慮したものではないから、原告の休業損害や逸失利益を考える場合の基礎収入としては、平成七年度の賃金センサスによる、六五歳以上の女子の平均年収二八八万三七〇〇円によるのが相当である。

(3) もっとも、前記認定の症状経過からすると、事故から約二か月半(退院後約一か月)の平成七年八月末までが、就労不能であったに止まり、その後は、症状固定診断のあった平成九年一月一三日時点の後遺障害による逸失利益と同じ程度の制約があったに止まるものとし、その程度は後記のとおり、四五パーセントとするのが相当である。

(4) そうすると、症状固定までの休業に伴う逸失利益は、次のとおりとなる。

2,883,700×(81÷365+0.45×(1+135÷365)=2,417,566

(五) 入通院慰謝料 一〇〇万円

前記認定の原告の傷害の部位程度や入通院状況等からすると、右金額が相当である。

(六) 後遺障害による逸失利益 五六二万二四三六円

(1) 左前額部の顔面醜状痕は、原告が既婚の六八歳の女性であることや、家族で料理店を営むに過ぎないことからして、労働能力に影響はなく、併合等級を考慮するのは相当ではない。

眼症状について八級該当との事前認定があったところ、複視のため、物の遠近感が分からず、包丁を使えなくなった(原告の陳述・甲一五)というのはもっともであり、そのため家業の調理の仕事をこなせなくなったと認められるから、労働能力喪失による逸失利益の割合は基礎収入の四五パーセントとするのが相当である。もっとも、原告は症状固定時既に七〇歳と高齢であることや原告には既往症がある(甲一五によると、原告は四年前に左膝関節炎で人工関節を入れる手術を受けている。)からすると、稼働可能期間は六年として、そのうち後半の三年は、逸失利益の割合は三〇パーセントに止まるとするのが相当である。

そこで、新ホフマン方式により中間利息を控除すると、逸失利益は、次のとおりとなる。

2,883,700×0.45×2.7310=3,543,923

2,883,700×0.3×(5.1336-2.7310))=2,078,513

(七) 後遺障害慰謝料 八〇〇万円

前記認定の後遺障害(顔面醜状痕を含む。)のほか、原告の平均余命等をも考慮すると、右金額が相当である。

(八) 物損(原告車の全損) 三万円

当事者間に争いがない。

(九) 自宅改造費 二七万八一〇〇円

原告が夫と居住する自宅建物は一階が駐車場で二階が居住部分となっている。右建物では平成七年七月三一日までに、二階に上がるためのリフトを設置し、その工事代金として八三万四三〇〇円を支払った。(甲一三の1、2、一四、一五)

右工事は、原告の複視や足の負傷から階段の昇り降りが不自由となったために行われたものと認められ(甲一五)、本件事故による損害と言える。

もっとも、原告の年齢や、前記の既往症、原告の夫もリフト設置により受益することなども勘案すると、右費用のうち三分の一の二七万八一〇〇円の限度で、本件事故と相当因果関係があるに止まるとするのが相当である。

(一〇) 眼鏡代 二九万二三〇〇円

当事者間に争いがない。

(一一) タクシー代 二〇万〇六一〇円

当事者間に争いがない。

(一二) コンタクトレンズ代 三六万二三〇七円

原告は左眼については、一生、コンタクトレンズを装用しなければならなくなった。半年の一度程度の割合で交換しなければならず、その購入費用は一年に三万円ほどになる。(甲一五)

そうすると、七〇歳の平均余命は一七年であるから、将来の購入費用の現価は、新ホフマン係数で中間利息を控除すると、次のとおりとなる。

30,000×12.0769=362,307

(一三) 損害填補

以上の損害は合計二〇八四万〇五四九円となるところ、原告が被告らから、二三六万一四九〇円の損害填補を受けたほか、自賠責保険金として事故からちょうど三年後である平成一〇年六月一二日に一〇四三万円を受領したことは当事者間に争いがなく、これを右損害金に充当すると、残額は八〇四万九〇五九円となる。

(一四) 弁護士費用

原告が本訴の提起遂行を原告訴訟代理人に委任したことは当裁判所に顕著であるところ、以上による認容額のほか、本件訴訟の経緯等、諸般の事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は、八〇万円が相当である。

(一五) 遅延損害金

以上の損害は、いずれも事故発生時点に生じたものと見るべきところ、その損害については不法行為の日から遅延損害金が発生するから、前記の保険金受領日までの保険金額相当額に対して生じた遅延損害金は、填補されずに残っていることになる。その金額は一五六万五九二八円である。

10,430,000×0.05×(3+1÷365)=1,565,928

(一六) 以上によると原告の請求できる金額は一〇四一万四九八七円(うち遅延損害金分一五六万五九二八円)となる。

四  よって、原告の本訴請求は、金一〇四一万四九八七円とうち金八八四万九〇五九円に対する本件事故の日である平成七年六月一二日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の請求を求める限度で認容し、その余は失当として棄却することとし、民事訴訟法六一条、六四条本文、六五条一項本文、二五九条一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 下司正明)

(別紙) 損害計算表(9ワ1598)

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